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フィラリア症の話

今年もフィラリアの予防のシーズンになりました。フィラリアが、いかに恐ろしい病気か ということは病院でもご説明していますが、なかなか短い時間では説明しきれませんので今 回特集をくんでみました。いかに予防が大事かご理解いただければ幸いです。  


■フィラリアて何?                                      
犬フィラリア症は、心臓の中に30cm程の細長い虫が寄生することによって起こって来る病 気のことです。フィラリアは心臓の右心室、肺動脈それに後大静脈等の静脈系を寄生場所に しています。ですからフィラリア症は静脈系の循環不全として色々な症状を示して来ます。 以前フィラリア症は、犬の成人病といわれ死因の30%以上を占めていました。
20年程前に予防法が確立されましたが、毎日ないしは隔日に投薬ということで煩雑であったのと予防薬自 体がかなりすっぱく犬が嫌り、完全撲滅には至りませんでした。 

5年程前に月1回の投薬 で完全に予防出来る薬が、開発され実用化され予防率が上昇してきています。それでもつい 先日の報告で、東京地区の感染率が約3割というデーターがあります。まだまだ予防をやめ るわけにはいきません。どこに感染源の犬がいるかわかりません。


■どこからうつるの?                                     
フィラリアは、蚊が媒介昆虫となって感染します。すでにフィラリアに感染している犬の 血液中には、フィラリアの子虫のミクロフィラリアが沢山います。(ミクロフィラリアは小 さく肉眼では見えません。)その血液を蚊が吸血するときにミクロフィラリアも一緒に吹込 んでしまいます。そしてミクロフィラリアは蚊の体内で約2週間かけて2回脱皮して感染子 虫になります。ミクロフィラリアが感染子虫に成長できるのは蚊の体内だけです。感染子虫 を持った蚊が次ぎの犬を吸血するときに感染子虫は蚊の唾液とともに蚊から脱出して犬の体 内へ侵入します。これで感染は成立です。要するに2週間前にフィラリアのいる犬を刺した 蚊に刺されると感染する訳です。一匹の蚊は最大15隻の感染子虫を持つことが確認されてい ます。フィラリアを媒介する蚊は、主にトウゴウヤブカやアカイエカ等のヤブ蚊類ですが、 シマカ等も媒介することが出来ます。           

体内に侵入したフィラリアは、最初の1〜2ヶ月は皮下組織や脂肪組織内で成長します。 この時期にはなんの病害もありません。2回の脱皮を行なった後、静脈内に侵入し除々に心 臓に近付きます。心臓に到着するとまず肺動脈に落ち着きます。そこで段々成長し、約6ヶ 月で成虫になります。成虫になると寄生場所は主に心臓の右心室ですが一部肺動脈にも寄生 しています。 ちなみに成虫の寿命は3〜5年です。


■症状は?                                 
フィラリア症は、慢性症と急性症に大別されます。

慢性症

フィラリアが長期間心臓に寄生していることによって循環器系に色々な障害が生じます。 肺動脈に寄生していることによって、肺に負担がかかり咳をするようになります。フィラリ ア症の最初の症状はこの咳から始まります。次に全身の血液の流れが悪くなり、肝硬変を起 こして来ます。このころから心臓自体も疲れきってしまい心不全の状態になります。ここま で来ると元気もなくなってしまい、散歩の大好きだった犬も嫌がるようになります。そして 最後に肺と腹部に水がたまるようになります。肺水腫と腹水です。こうなるともう幾らも寿 命は残っていません。感染してから末期症状を程するようになるのにだいたい2〜3年とい われています。                                  

急性症

多数の虫体が後大静脈に一度に詰まってしまうことによって発症します。別名後大静脈 塞栓症といわれる所以です。後大静脈に虫がぎっしり詰まってますから血液が流れること が出来なくなてしまいます。心臓は生きる為に無理にでも血液を流そうとしますから血球 に負担がかかりどんどん壊れていきます。血管内溶血です。どんどん血液が壊れる為に急 速に貧血が進行します。そのままにしておくと一晩で死亡することもあります。血管内溶 血を起こすことで尿も赤くなります。急に元 がなくなり、赤い尿をしたらフィラリアの 急性症の可能性が大です。  


■治療は?
不幸にも感染してしまった場合でも治療は可能です。治療方法も慢性症と急性症で違って 来ます。                                     
慢性症:  
まず初めに、現在の症状を進行させない為にただちに予防を始めます。(予防について  は後述)治療は症状の程度によって違って来ます。初期症状の場合は、鎮咳薬や抗炎症剤の 症療法を行ないます。中等度から重度の場合は、強心剤や利尿剤による全身治療を行ないま す。末期で腹水の貯留が著しい場合には外科的に除去することも有ります。中等度から末期 にかけて右心室肥大がある場合には、病状の進行を止めて症状の改善に務めますが完治する ことは出来ません。                                

急性症
: 
急性症の場合は、外科的に後大静脈から虫体を摘出します。方法としては、頚静脈から細い鉗子を挿入して、心臓をとうりこして後大静脈に詰まっている虫を摘出します。急性症の場合、発症直後であれば、心肥大等の慢性症状がない限り摘出後直ちに回復し元気になります。急性症の場合一刻も早く手術をすることが肝心です。


■予防方法は?
蚊のいる時期(5月〜11月)に月に一度、体重にみあった量の薬を投薬するだけです。薬 は錠剤、粉の外にジャーキ状になったものがあります。また当院で処方している予防薬は、 フィラリアだけでなく消化管内寄生虫である回虫や鉤虫も同時に駆虫できますので、それらの感染防止にもなります。 
ただこの予防薬にも一点だけ欠点が有ります。それは既に感染している犬に投薬するとショックを起こしたり、急性症を引き起こすことがあることです。 ですからシーズン初めの投薬前には必ず血液検査を実施し、血液中にミクロフィラリアがい ないことを確認してから投薬開始します。

不幸にも検査で感染が判明した場合には、入院させてショック防止の処置を行なった後に 予防を実施します。また投薬後急性症が起こった場合には直ちに手術を実施します。
     
以前フィラリアのワクチンと称して、春先に2〜3回注射を打ったり、フィラリアの治療 の一環として感染している成虫を注射によって駆虫していました。現在もある一定の条件が 満たされている場合には治療の一環として実施しますが、決して予防のひとつとしては実施 していません。この注射は、非常に副作用の強い薬物ですから入院させて我々の監視のもと での使用になります。また死んだ虫体は、肺に詰まりますから一時的に肺梗塞を起こします。
感染虫体が多い場合には、肺全野に渡って梗塞を起こしますから死亡することも有ります。 したがって感染数の確認と薬の副作用に耐えうるかどうかの検査を実施してからの使用にな ります。ですからまだ若い元気な犬で、フィラリア症の症状が出てなく、感染してからの期 間が短く、なおかつ感染数の少ない場合に限られます。この条件を満たしている場合には、 この薬で駆虫してから予防に入る方が効果的な場合があります。 

フィラリアの感染数は、 血中フィラリア抗原検査と心血管造影法によってほぼ確定出来ます。お読み頂いたように、フィラリアは感染してしまったら大変なことになってしまいます。

予防が大事なことがお判り頂けたと思います。


 
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