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猫の繁殖生理と産前産後の病気

家族と一緒に生活している猫達が、出産をして子育てをする。こんな素晴らしいことはありません。特に小さなお子さんにとって、その経験は一生のものとなり人生の宝となることと思います。ただ寝静まった世界に響きわたる「ふぎゃー」という嬌声は勘弁して ほしいものです。今回は、猫の繁殖生理と、それに伴う疾病についてです。


猫の繁殖生理

□雌猫の場合

性的発育
雌猫は、性的に未熟な状態で生まれてきます。生まれた直後から卵巣の急激な 発達が始まり、それとともに雌性ホルモンであるエストロジェンの量が増えます。発達の ピークは生後4ヶ月頃で、成熟の早い猫はこの頃に1回目の発情が来ることがあります。当 然妊娠もできます。ただまだ体も成長しきっていませんので、早い時期の妊娠は避けるべ きです。一般的には、性成熟に達するのは7ヶ月過ぎといわれています。ただ性成熟した からといって直ちに第1回目の発情が来るとは限りません。発情には、外的環境の影響が 強く出ますので、性成熟に達した後に、発情に適した季節などの外的環境が満たされると 発情が始まります。遅い猫では、生後1年半すぎてから初めて発情する場合もあります。

雌猫の性周期
性成熟に達した雌猫は、定期的に発情を繰り返すようになります。この間隔を性周期といいます。猫の性周期は、16日〜36日といわれています。交尾をしなければ、この間隔で発情を繰り返すはずですが、先程も触れたように外的環境が適していなければ、 発情は抑制され、発情しない時期が長く続くこともあります。性周期に関係しているホル モンは、下垂体から分泌される、性腺刺激ホルモン、卵巣から分泌されるエストロジェン やプロゲステロンなどがあり、このほかにもこれらを抑制するホルモンなどが複雑にから みあって性周期を支配しています。では性周期の中を見ていきましょう。

発情休止期
または、発情間期ともいいます。この時期は、全く発情していない時期です。 卵巣の中にも、卵胞はなく(とはいっても成長しつつありますが)、エストロジェンの量 も一番少ない時期です。                             

発情前期

この時期卵巣の中の卵胞は、急激に成長し、猫は、活発に活動するようになり ますが、まだ発情独特の姿勢をとったり声を出したりはしません。交尾もしません。  

発情期

卵胞も最大になり、発情独特の行動が見られるようになります。交尾を行い、妊 娠も可能です。この時期はだいたい1週間程度持続します。             
発情後期
発情が収束に向かう時期です。エストロジェン濃度は低下し、排卵しなかった 卵胞も小さくなっていきます。この時期交尾はしません。              
妊娠期
発情期に交尾を行い、受精が行われると後期をとばして妊娠期になります。成熟 黄体が形成され妊娠を維持しようとします。妊娠しなくても成熟黄体が形成されることが あります。胎児がいないだけで体の中は、全く妊娠期間中と同じ状態になります。これが 擬妊娠です。人の想像妊娠とは違います。妊娠期は、だいたい2ヶ月です。      

哺乳期

出産を経て哺乳期があります。哺乳期はだいたい1ヶ月程、子猫が離乳するまで続きます。妊娠期と哺乳期の間は発情はしません。哺乳が一段落して子猫の哺乳刺激が減っ てくると発情が回帰してきます。一回目の発情回帰でも、妊娠可能ですから注意して下さ い。                                      
雌猫の発情の特徴

ここまでお読みになってになって、女性の方は「あれなんか変だぞ」 と思われたかもしれません。そうなんです。猫は交尾しない限り、排卵しないのです。こ の交尾排卵こそが猫の性周期の最大の特徴です。私達の、近くにいる動物で交尾排卵の形 式をとるのはウサギがいます。交尾排卵とは、雄との交尾刺激がなければ排卵しないシス テムのことで、雄の精子が、入ってきてから排卵すると言うことです。犬では、排卵が交 尾刺激がなくても自動的に行われますので、卵子が受精するのにちょうどいいときに交尾 しなければ妊娠しませんが、猫では発情中ならいつでも妊娠可能なわけです。猫が交尾したとたんに発情が終わって見えるのもこのためです。交尾したことによって排卵が起こり、 卵胞が急速に退縮しエストロジェン濃度も低下するためです。交尾しなくて排卵しなかっ た卵胞も退縮して自然に消滅します。よく発情を止めるのに、滅菌綿棒で陰部を刺激する 方法が紹介されていますが、交尾排卵が故に出来る技です。犬にやっても何の効果もあり ません。

□雄猫の場合                           

雄猫も、性的には未成熟のままで出生します。陰嚢のなかには、精巣はなく、出生時に はお腹の中にあります。生後1ヶ月ほどかけて、お腹の中にあった精巣は、後ろ足の付け 根の鼠径輪という穴を通って陰嚢に降りてきます。これを精巣下降といいます。陰嚢に精 巣にが降りてくることによって、精巣から男性ホルモンであるテストステロンの分泌量が 増え急速に性成熟が進みます。性成熟に向かってペニスが発達します。特に先端部にトゲ トゲが出来てきたり、雌とは違い大きく形態的にも変化します。

性成熟は、雌とだいたい 同じで生後半年ほどで完了します。遅い猫でも1年ほどで完了します。雄の場合は、いつ 性成熟に達したかははっきりしません。雌のように発情があるわけでは無いですし、まだ 精子が作られていない頃から、発情した雌猫に対して反応する雄もいますのではっきりわ かりにくいことが多いです。発情している雌猫に反応するだけで、雄には性周期はありません。雄の性行動としては、マーキングが代表的なものです。このマーキングのはじめが、 性成熟完了の合図といえるかもしれません。ただしない猫もいますので。


■避妊手術と去勢手術

避妊手術
雌猫の、卵巣ないしは卵巣と子宮を摘出する手術を避妊手術といいます。生後4ヶ月過ぎから実施可能です。卵巣を摘出することにより、性ホルモンが無くなります ので性衝動もなくなり発情時のストレスもなくなります。子供を作る予定が無いのなら是 非手術してください。手術は、麻酔も含めて一時間ほどで終わります。術前に異常が無い かの検査をしっかりしてから行えば、怖い手術ではありません。時々手術したのに発情が くることがあります。これは、脂肪組織に蓄積していたホルモンが、一時的に放出されて起こすものです。通常弱い発情が1回から3回ほど来て終わるはずです。あともう一つやっかいなのは、副卵巣といわれる卵巣様の組織が手術後出来てしまうことです。この場合は、通常の発情が発来します。原因はまだはっきりしていません。再度手術しても肉眼では、見つけられないことの方が多いようです。                     

去勢手術

雄猫の、精巣を摘出する手術を去勢手術といいます。雌猫と同じく、生後4ヶ 月過ぎから実施可能です。マーキングの防止にも効果があります。手術は、15分ほどで終 わります。安全な手術ですから、是非実施してください。去勢手術の変法としていわゆるパイプカットがあります。これは。精管だけを切断し、精子が出ないようにする手術です。 精巣は、生きていますからマーキングもしますし、発情した雌猫にも反応します。そういう意味では、去勢手術の範疇にはいらないかもしれません。


産前産後の疾病

□産前の疾病

流産
何らかの原因で妊娠維持が出来なくなると流産します。物理的な衝撃や細菌感染、 栄養不良などが考えられます。                         
子宮破裂

妊娠後期に高いところから落ちておなかを打ったりすると子宮が破裂することがあります。まだ出産するには早すぎるのに陰部を異常に気にしたりするときは、気を付けてください。続くようなら動物病院へつれていってください。           

ミイラ胎児

妊娠途中で不幸にも胎児が死亡してしまったにもかかわらず、流産せずに子 宮内に残ってしまった場合に起こります。正常胎児もいて出産がおこれば出てきますが、全胎児が死亡した場合等に出てこないことがあります。死亡胎児は、水分が吸収されてか らからの状態になっています。摘出してあげないと母猫の負担になりますし、子宮蓄膿症 等の原因にもなりかねないので可能性があるならすぐに動物病院に行って下さい。   

□産後の疾病                          


産褥熱
胎児の成長や、哺乳のために母猫はものすごい量のカルシウムを使いますが、それに見合った量のものを摂取出来てないと起こします。摂取カルシウムやカロリーが不足 するとふらふらしたり、ひどいときには立てなくなったり痙攣します。そうならないように、栄養のバランスの取れた哺乳期に適したフードを与えてください。        

後産停滞

子宮内に胎盤が残ってしまうと起こります。出産後にいつまでたっても陰部か ら分泌物の排出が続く場合には注意して下さい。                  
子宮内膜炎

出産後の子宮の修復に手間取ったり、感染を起こすとなります。出産後元気 がなくなったり、食欲が出なかったりしたら注意して下さい。
産前産後には関係有りませんが、子宮蓄膿症という病気があります。子宮の中で感染が 起こり、子宮の中が膿でいっぱいになる病気です。発情終了から1ヶ月くらいが好発時期 です。発情休止期は黄体ホルモン優位で、子宮は妊娠したのと同じ様な状態になっていま す。(交尾していたら妊娠している時期です)非常に栄養に富んだ状態になっています。

そこに細菌が入り込んだらすごい勢いで繁殖します。その時期に、妊娠していないはずな のに、おなかが大きくなってきて、元気がなくなって、水をよく飲むようになったら間違 い有りません。すぐ手術です。こんな病気も有りますから、子供を生ませないのなら是非 避妊手術を受けさせてあげてください。


 
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