ホーム 目の病気について 病院案内 リンク 質問受付 荻窪の遺跡
 

■お正月の事故と病気の応急処置

今回から、このコーナーを担当することになりました獣医師の増永です。皆様のために なる情報を提供できるよう努力いたします。
さて今回編集部よりいただいたテーマはお正月の事故と病気の応急処置。人の世界では お餅を喉に詰まらせてしまい云々という、お正月早々悲しいニュースをよく耳にします。 さすがに猫が、餅を喉に詰まらせて死亡したという話はほとんど聞いたことがありません が、この時期、動物病院も休診にするところが多く、緊急事態の時に処置が遅れ、悲しい 結果になったという話は耳にします。この場合も、猫ちゃんの一番近くにいる飼い主の皆 様に、ちょっとした応急処置の心得があれば救えた命もまた沢山あったと思います。
 
応急処置の、第一の目的は命を救うことです。そして第二に猫を危険から遠ざけ、痛み や苦痛を和らげてやり、病気や怪我の進行を止め、危機的状況にある猫を回復方向に向か わせることです。そして飼い主としてやらなければならない重要なことがもう一つ。それ は状況把握して、どこでどうしてどうなったのかまた、生命の危険を示す兆候が無いかど うかを見極めることです。
 
我々獣医師が、治療を始めるうえで状況把握がしっかりできているかいないかでスタートの位置が違ってきて、命を助けられるか助けられないかの境目になることもあります。それともう一つ。普段の元気な時に、皮膚や歯茎の色や、心臓や 動脈の拍動を把握しておいてください。
 
また遊びながら肋骨や背骨と前肢、後肢の位置関 係を覚えておきましょう。つけたしでもう一つ。お正月の診療体制がどうなっているか、 お休みになる前に主治医の先生に確認しておいて下さい。先生がいない場合、診療してく れる病院を教えてもらっておいて下さい。非常事態の場合は往診を依頼するのではなく、 設備の整った病院へつれていってください。

人工呼吸器からカウターショックまで担いで 往診して来る獣医はまずいませんので。往診では手遅れになることがあります


■それではまず応急処置の総論から。

危機的状態の応急処置の流れをアルファベットで示したものがあります。

A:AirWayの確保。呼吸をしているかどうかを確かめ、していなければ口の中や喉まで 見える範囲を確認し異物がないか確認します。
  もし何か異物があれば取り除 いてやります。よだれなどの粘液質のものがあれば拭き取ってやります。

B:Breathの確保 呼吸していなければ人工呼吸してやります。

C:Circulationの確保 心臓が停止している場合は心臓マッサージして循環を確保します。

D:Drugの投与 本来は、止まっている心臓を動かすための薬物や体の中の状態を整える ための薬物の心臓内や肺への投与を意味するのですが、
  心臓病などで常備薬を もらっている場合、主治医に緊急時の使い方を聞いておいてください。飲ませ なくても、砕いて舌下にいれるだけで効果のある
  薬もあります。

E:心電図の判定 

F:除細動・・・・・・Eより先は器具が必要になり獣医師でなければできませんので省 略します。

AからCないしDまでは、ちょっと練習すればできるようになりますので、呼吸停止、心 止の見分け方から、人工呼吸、心臓マッサージのやりかたについては主治医の先生にお願いして練習しておいてください。

生命の基本的な部分の、維持ができたなら次に、傷口の消毒や止血、包帯、副木、エリザ ベスカラーの装着によって現状より症状が進行しないようにします。これらの処置の中で猫 に引っ掻かれたり、噛みつかれたりしないように注意してください。 猫は、痛みや驚きのために我を忘れていますから、しっかり保定してから行ってください。飼い主さんも救急に飛び込むようなことにならないように。  

最後に、移動です。緊急度に応じて自宅か動物病院へ移送します。  
これらのことは一連の流れの中で行います。また必ず順番にやらなければならないもので もありません。大出血しているのなら、なにをおいても止血が第一です。普段から頭の中で シュミレーションしておいてください。


交通事故を例に応急処置の流れをみてみましょう。

まず猫を安全な場所に移動します。
そして先程のA.B.Cを確認してください。呼吸はしているが、ものすごく苦しそうな場合は、横隔膜が破けてヘルニアを起こしているかもし れません。歯茎の色を見ていただいていつも通りきれいなピンク色していればいいですが、 青っぽくなっていればそれはチアノーゼをおこしています。直ちに動物病院へいってくださ い。途中で呼吸が止まるようならBを実行してください。問題なければ安静にして様子を観察して下さい。

どこかに出血がないか、骨は折れていないかなど何か普段と違うことがない か観察してください。このときむやみやたらとさわらないでください。猫は、興奮状態です からさわられるのをとてもいやがります。さわるのは必要最低限にしてください。手足の骨 折が確認できたなら、どんなに変な形になっていても元に戻そうとはしないで下さい。可能 ならそのまま固定して下さい。固定が無理ならそのままキャリー等に入れて、動き回らない ようにして、直ちに動物病院へいって下さい。単純に骨折だけなら一晩ぐらいの余裕はありますが、あの固い骨が折れるぐらいの強い衝撃を猫は受けたわけですから、内臓もダメージ があることが多いのでなるべく早く動物病院へつれていってあげて下さい。

手足に力が入ら ずだらりとしている場合は脊髄損傷の可能性があります。この場合キャリー等にいれてあま り動かないようにして直ちに病院につれていって下さい。脊椎損傷の場合、その程度にもよ りますが処置は、交通事故から24時間が勝負になります。  

意識障害やケイレンがある場合は、まず安静と保定です。もともとてんかん体質の場合は 5分ほど様子を見ていれば落ち着いて意識も戻ることもあるかもしれませんが、そうでない 場合は脳の損傷を疑います。ばたばた暴れるようなケイレンを起こしている場合には毛布等 でくるんであげて、これ以上怪我をしないようにして下さい。そのときに猫の口の周りにあ なたの手を持っていくのはさけて下さい。無意識に噛まれた場合に離してくれません。大変 危険です。

横たわったまま手足を規則的に歩くように動かしている(遊泳運動)場合は意識 障害があります。
これは止めようと思ってもとまりません。この場合も毛布等でくるんで下 さい。どちらの場合も直ちに動物病院へ連れていってください。  

交通事故でも、車の下に巻き込まれた場合には、排気管等との接触により火傷をすること があります。火傷のが疑われたら患部をまず冷やして下さい。水道水をかけるのが一番いいのですが、猫がいやがりますので、タオルに水をひたして患部に当てて下さい。そのとき絶 対にこすらないで下さい。こすると皮膚が剥げてしまうことがあります。そしてすぐに動物 病院へつれていって下さい。

どこをどう見ても、なんともない。こんな場合でも皮膚の色やお腹の膨れ具合を見て下さい。いつもと違って青黒くなっていれば皮下出血があります。
広範囲におよぶ場合は、痛みがなくても動物病院へ行ってください。DICといって血液の凝固異常を併発する可能性が あります。

また皮下出血はないけれど、お腹がいつもに比べて膨れている場合は、内臓破裂に伴う服空内出血の可能性があります。この場合最初何の症状も無い場合がありますので注 意して下さい。 何処にも異常がない場合でも、交通事故の場合は、事故から2〜3日は安静にして様態をよく観察して下さい。食欲もあるし水もよく飲むしいい便もしているし・・・。あれおしっこは?なんてことがないようにして下さい。膀胱破裂だけの場合、症状が出てくるのはかなり後になります。気をつけて下さい。  

交通事故を例に応急処置の流れをみてきましたが、それ以外の場合でも基本は同じです。 まず現状把握して、一つ一つの現象に対処して下さい。あせりは禁物です。

さあ猫のぬいぐるみを持って、主治医の所へ行きましょう。そして人工呼吸や心臓マッサージのやりかた、そして安全な保定方法を教わって下さい。最初は変な顔されるかもしれませんが、あなたの熱意がわかればきっと一生懸命教えてくれるはずです。くれぐれも元気な猫 を連れていかないように。あなたと先生の手と顔に爪痕が残るだけですから。


付録

異物の飲み込み:
何を飲み込んだかによって違ってきますが、原則的には口の中に残っ ているものを除去した後に、強制的に吐かせます。吐かせ方は。3%過酸化水素水(オキシフル) を小さじ一杯飲ませるか、3gの食塩を飲ませます。5分待っても吐かない場合には、もう 一度飲ませます。3回やっても吐かない場合や、吐いたものの中に飲み込んだものが出ていない場合には、直ちに動物病院へ連れていってください。吐かせることに危険が伴うもの、たとえば釣り針などの鋭利なものや、お便所掃除用の酸の強い洗剤などの場合は吐かせずに動物病院へ連れていってください。吐かせていいものかどうかは動物病院に連絡して確認してください。

一酸化炭素中毒:
まず換気して下さい。呼吸が停止していない場合は、新鮮な空気を吸 わせることによって回復します。ただし呼吸が弱かったり、意識障害がある場合には直ちに 動物病院へ連れていってください。
呼吸が停止している場合は、直ちに新鮮な空気のもとで 人工呼吸をしながら動物病院へ連れていってください。

感電:
コタツのコードで遊んでいるうちに、エキサイトしすぎてガブリとやって感電するこ とがあります。コードを噛んだまま硬直したり、ケイレンしているときはコードをコンセン トから抜いて電気を止めて下さい。コードを抜く前に猫にさわるとあなたが感電しますから気をつけて下さい。そして心臓の動きと呼吸を確認して下さい。していない場合には心臓マッ サージと人工呼吸をしながら動物病院へ連れていって下さい。自力でコードから離れた場合 でも、口の中に火傷があるはずです。赤く腫れていたり、出血しているようなら動物病院へ 連れていってください。

ケイレン:
一口でケイレンとっいても多種多様です。ここでは腎不全や肝不全等の既往症のないケイレンのことを指します。いわゆるてんかん発作です。猫がてんかん発作を起こし てもあわてないで下さい。よほどのことがない限り生命に危険はありません。発作が始まったら極力刺激しないようにして安静にして下さい。部屋を薄暗くして、音を出さないように して下さい。5分もすれば収まるはずです。収まったら動物病院へ連絡して指示を仰いで下 さい。


 
Copyright (c)1996-2007. Masunaga Animal Hospital all right reserved